「業務効率化」と聞くと、高いシステムを入れる話だと思われがちです。でも10人前後の会社では、お金をかけずに減らせるムダのほうがずっと多くあります。
この記事では、小さな会社に多いムダの見つけ方、何から手をつけるかの決め方、今日からできることから少しお金をかけることまでのアイデア15個、効果の測り方とやめる基準をまとめます。
結論:業務効率化は「やめる」から始める
- 道具より先に、やめられる作業を探す二重入力、紙の回覧、目的のない報告など、なくしても困らない作業がいちばん効く
- 考える順番は「やめる→まとめる→入れ替える→簡単にする」ツールやAIは最後の「簡単にする」の手段。先にやり方を整えないと、ムダごと速くなるだけ
- 選ぶ基準は「回数×時間」1回は短くても、毎日くり返す作業のほうが、月にすると大きな時間になる
- 1か月で効果を測り、減らなければやめる始める前の時間を記録しておけば、続けるかどうかを数字で決められる
業務効率化とは?業務改善との違い
業務効率化とは、同じ仕事を、より少ない時間や手間でできるようにすることです。よく似た言葉の「業務改善」は、仕事のやり方そのものを良くすることで、品質や働きやすさを上げることまで含む、もう少し広い意味で使われます。
どちらも、目指すのは「ムリ・ムダ・ムラ」を減らすことです。人に無理な負担がかかっている(ムリ)、なくても困らない作業がある(ムダ)、人や日によってやり方や忙しさがばらつく(ムラ)。この3つを減らすと、残業が減り、人を増やさなくても仕事が回るようになります。
小さな会社に多い7つのムダ
大きな会社の業務効率化の記事には、あまり出てこないムダです。10人前後の会社では、次の7つが時間を取っていることがよくあります。
- 同じ内容を何度も入力する(二重入力)手書きの伝票をExcelに打ち直し、さらに会計ソフトにも入れる。打ち直すたびに時間がかかり、写し間違いも起きる
- 紙の回覧と押印申請書や回覧が机から机へ回る。誰かが休むと止まり、どこで止まっているかも分からない
- 電話の取り次ぎと伝言メモ担当者が不在のたびに取り次ぎ、メモを書いて渡す。メモがなくなると、折り返しを忘れる
- 探し物書類、ファイル、道具の置き場所が決まっていない。どれが最新版か分からない
- 口頭だけの指示言った・言わないが起き、確認の電話や作業のやり直しが増える
- 「あの人しか分からない」仕事その人が休むと止まり、質問がその人に集中する
- 目的のはっきりしない会議や報告毎週の会議や日報が、何のためにあるのか分からなくなっている
どれも、1回あたりは数分の小さなムダです。ただ、毎日くり返すので、積み重なると大きな時間になります。
業種ごとによくあるムダの例
同じムダでも、業種によって現れ方が違います。自社に近いものから探してみてください。
- 製造業手書きの作業日報を事務の人が集計し直す。図面や作業手順書の最新版がどれか分からない。在庫を数え直すために倉庫まで行く
- 建設・工事業現場の写真を1枚ずつ整理して報告書に貼る。段取りの連絡を何人にも電話で伝える。日報を事務所に戻ってから書く
- 小売・サービス業予約や問い合わせの電話で接客が止まる。発注や在庫のメモが人ごとにバラバラ。シフトの調整を口頭とメモでくり返す
- 事務所・士業同じ書類をお客様ごとに一から作る。書類の受け渡しに郵送と電話の確認が往復する。顧客の情報が紙・Excel・メールに分かれている
どの業種でも、ムダが出やすいのは「情報を写す・伝える・探す」ところです。ここを減らすと、本来の仕事(作る・売る・お客様に向き合う)に使える時間が増えます。
業務効率化の進め方:「やめる→まとめる→入れ替える→簡単にする」
業務改善の考え方に「ECRS(イクルス)」というものがあります。やめる(Eliminate)、まとめる(Combine)、入れ替える(Rearrange)、簡単にする(Simplify)の頭文字で、この順番に考えると効果が大きいとされています。
- やめる「この作業がなくなったら、本当に困るか」を考える。誰も読んでいない報告書、念のためのコピー、形だけの承認は、やめても困らないことが多い
- まとめる同じことを2回していないかを見る。二重入力を1回にする、バラバラの連絡先を1つの名簿にまとめる
- 入れ替える順番や担当、やり方を変える。電話で受けていた注文をフォームで受ける、確認の順番を変えて差し戻しを減らす
- 簡単にする残った作業を、道具で楽にする。テンプレート、スマホのフォーム、クラウドのソフト、AIの下書きなど
よくある失敗は、いきなり4番目の「道具を入れる」から始めることです。ムダな作業が残ったまま道具を入れると、ムダごと速くなるだけで、思ったほど楽になりません。
何から始めるか:「回数×時間」で選ぶ
ムダが見つかったら、全部を一度に変えようとせず、1つずつ取り組みます。どれから始めるかは、「1回の時間×1か月の回数」で比べるのがいちばん確実です。
| 作業 | 1回の時間 | 1か月の回数 | 1か月の合計 |
|---|---|---|---|
| 伝票の打ち直し | 10分 | 40回 | 約6.7時間 |
| 電話の取り次ぎと伝言 | 3分 | 200回 | 10時間 |
| 月末の請求書づくり | 4時間 | 1回 | 4時間 |
数字は書き方の例です。電話は1日10件・月20日で計算しています。
この例では、1回3分の電話の取り次ぎが、月に1度の大仕事の請求書づくりより時間を取っています。小さくて回数の多い作業ほど、見落とされやすく、減らしたときの効果が大きいのです。時間の書き出し方は「AIで業務効率化する方法」の進め方でも紹介しています。
業務効率化のアイデア15選
お金のかからないものから順に並べました。上から試していくのがおすすめです。
お金をかけずに、今日からできること
- 最初に入力する場所を1つに決める手書き→Excel→会計ソフトの打ち直しをやめ、最初からExcelかソフトに入れる。二重入力がなくなる
- よく作る書類をテンプレートにする見積書、送付状、案内文など。毎回ゼロから作らず、決まった形を写して直すだけにする
- ファイルの置き場所と名前の付け方を決める「日付_取引先_書類名」のように決めておくと、探す時間と、古い版を使う間違いが減る
- 会議は「終わる時間」と「決めること」を先に決める決まったことと宿題だけを残す。議事録の書き方は「議事録の書き方」で紹介
- 読まれていない報告や回覧をやめる「これは誰が、何のために読んでいるか」を聞いて、答えが出ないものはやめてみる
- よく聞かれることの答えを1枚にまとめる社内の質問(手続き、道具の場所)もお客様からの質問も、同じ答えを何度も言わずに済む
少しお金をかけて、仕組みにすること
- 紙の日報や申請をスマホのフォームにする入力された内容が最初から表になるので、打ち直しと回覧がなくなる。無料で使えるフォームもある
- 予定と設備の予約を共有カレンダーにする「今日誰がどこにいるか」「車や会議室が空いているか」を、聞かずに確かめられる
- 社内の連絡をチャットにまとめる電話の伝言や口頭の指示を文字で残す。言った・言わないと、伝言の書き忘れが減る
- お客様からの受付を電話以外にも広げる問い合わせフォームやLINEで受けると、取り次ぎが減り、営業時間外の受付もできる
- 会計・請求をクラウドのソフトにする銀行の明細を取り込んだり、請求書を作って送るまでを1か所でできたりする。月末の作業がまとめて軽くなる
AIを使うこと
- メールや案内文の下書き見積書の送付文、お知らせ、求人原稿などを、白紙から書かずに済む
- 議事録の清書録音を文字に起こし、決まったことと宿題に整理させる
- 日報・報告のまとめ1週間分の日報を、週報の形に要約させる
- Excelの関数づくりやりたい集計を言葉で伝えて、関数を書いてもらう。計算はExcelに任せる
AIの使い方と、任せないほうがいい仕事は「AIで業務効率化する方法」で詳しく説明しています。
効果の測り方と、やめる基準
新しいやり方を始めたら、1か月ほどで効果を確かめます。そのために、始める前に、今の状態を数字で残しておくのが大事です。
- かかった時間その作業に、1回・1か月で何分かかっているか
- 残業時間担当者の月の残業が、前と比べてどう変わったか
- ミスややり直しの回数入力の間違い、差し戻し、折り返しの忘れなど
1か月たっても時間が減らない、かえってミスや手間が増えた、使う人がほとんどいない、という場合は、そのやり方は自社に合わなかったと判断して、やめるか元に戻します。やめるのも立派な結果です。合わないやり方を続けるほうが、よほどムダになります。
業務効率化で失敗しやすい5つのパターン
- ツールから入る何を減らしたいかを決めずに契約し、使われないまま月額だけ払い続ける
- 一度に全部変える現場が混乱し、元のやり方に戻ってしまう。1つずつ、1か月ずつが確実
- 現場の人に聞かずに決めるその作業をしている人が、いちばんムダをよく知っている
- 品質を守るための確認まで削る金額や数量の最終確認など、ミスを防ぐ作業は「ムダ」ではない
- 浮いた時間の使い道を決めない残業を減らすのか、後回しの仕事に回すのかを決めておかないと、時間はいつの間にか消える
社員の方に話すときは、「人を減らすため」ではなく、「残業を減らし、後回しになっている仕事に時間を使うため」と最初に伝えておくと、協力してもらいやすくなります。
使える補助金・助成金
ツールや設備にお金をかける場合は、国の補助金や助成金が使えることがあります。
- デジタル化・AI導入補助金(中小企業庁)会計・受発注などのソフトやクラウドサービスの導入を支援する補助金。2026年から、IT導入補助金がこの名前に変わった
- 業務改善助成金(厚生労働省)工場や事務所ごとに、いちばん低い時給を50円以上引き上げ、あわせて仕事の効率を上げる設備などに投資した場合に、その費用の一部を助成する(令和8年度は上限600万円)
業務改善助成金は、申請を受け付ける期間が短いので注意が必要です。令和8年度は、9月1日から、その県の最低賃金が変わる日の前日(11月30日のほうが早ければその日)までです。福井県の最低賃金は例年10月上旬に変わるため、受付は1か月ほどしかありません。使うなら、夏ごろから賃上げと設備の計画を立てておく必要があります。
どちらも年度ごとに条件や募集の時期が変わるので、申し込む前に最新の募集要項を確認してください。当相談室では、使える補助金・助成金のご案内と申請のアドバイスまでを行っています(申請書類の作成代行は行いません)。
よくある質問
業務効率化は、人を減らすためのものですか?
いいえ。10人前後の会社では、人を減らすよりも、今いる人の残業を減らし、人を増やさなくても仕事が回るようにすることが目的になることがほとんどです。求人を出しても人が集まりにくい今、採用にかかる費用を抑えることにもつながります。
どれくらいで効果が出ますか?
「やめる」「まとめる」は、決めたその日から効果が出ます。フォームやソフトなど新しい道具を入れる場合は、慣れるまでに数週間かかるので、1か月ほど続けてから判断します。
パソコンが苦手な社員が多いのですが、できますか?
できます。この記事の前半のアイデアは、パソコンの操作をほとんど必要としません。道具を入れる場合も、スマホで入力できるものを選ぶと、パソコンが苦手な方でも使いやすくなります。
何から始めればいいか分かりません。
まず1週間、事務作業に何分かかったかを書き出してみてください。「回数×時間」で並べると、最初に取り組む作業はほぼ決まります。
まとめ
- 業務効率化は「やめる→まとめる→入れ替える→簡単にする」の順ツールやAIは最後の手段
- 小さな会社のムダは、二重入力・紙・電話・探し物に多い1回は数分でも、毎日くり返すと大きな時間になる
- どれから始めるかは「回数×時間」で決める小さくて回数の多い作業ほど効果が大きい
- 始める前の数字を残し、1か月で判断する減らなければやめるか元に戻す
- 目的は人を減らすことではなく、残業を減らすこと最初にそう伝えると、現場の協力が得やすい