業務改善助成金は、会社の中でいちばん低い時給を50円以上引き上げ、あわせて仕事の効率を上げる設備などに投資した中小企業に、その費用の一部(最大600万円)を国が助成する制度です。福井県には、さらに県が上乗せする制度もあります。
ただし、申請を受け付ける期間がとても短く、福井県の令和8年度(2026年度)の受付は、9月1日から10月2日までのおよそ1か月で終わりました。この記事では、2026年度の対象・助成額・対象になる設備を厚生労働省の案内に沿ってわかりやすくまとめ、福井の会社が来年度に使うために今からできる準備を紹介します。
結論:来年度に使うなら、春から準備を始める
- いちばん低い時給を50円以上上げて、効率を上げる設備に投資すると、費用の一部が戻る助成率は3/4か4/5、上限は引き上げる人数と金額で30万〜600万円
- 最低賃金の引き上げに合わせて時給を上げる会社こそ対象新しい最低賃金より低い時給の人がいる事業場が対象。どうせ上げるなら、前倒しで50円以上上げて設備投資とセットにする
- 福井の受付は約1か月だけ令和8年度は9月1日〜10月2日。最低賃金が変わる日(10月4日)の前日までに賃上げも終える必要がある
- 交付決定の前に買った設備は対象外先に買ってしまうと、どれだけ条件を満たしていても助成されない
- 福井県の上乗せ補助がある国の支給決定額の5分の1を県が上乗せする補助金と、90円以上引き上げた場合の奨励金
業務改善助成金とは
業務改善助成金は、厚生労働省の助成金です。会社の中でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を引き上げる計画と、仕事の効率を上げる設備投資などの計画を立てて申請し、認められたら計画どおりに実行すると、設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。
最低賃金は毎年10月ごろに引き上げられます。人件費が上がる分を、設備投資で仕事の効率を上げて吸収してもらうための制度です。「賃上げ」と「設備投資」の両方をセットで行うことが条件で、どちらか片方だけでは対象になりません。
対象になる会社
次の条件をすべて満たす会社が対象です。
- 中小企業・小規模事業者であること大企業と密接な関係のある会社(みなし大企業)は対象外
- いちばん低い時給が、その年度の新しい最低賃金より低いこと福井県なら、令和8年度の最低賃金1,112円より低い時給の人がいる事業場
- 解雇や賃金の引き下げなどをしていないこと助成されない理由(不交付事由)がないこと
申請は会社ごとではなく、工場や事務所など、従業員がいる事業所ごとに行います。工場と事務所が別の場所にあるなら、別々に申請します。
2つ目の条件がポイントです。この助成金は、最低賃金の引き上げに合わせて、どうせ時給を上げなければならない会社が対象になる仕組みです。たとえば、いちばん低い時給が1,060円の事業場は、福井県の最低賃金が1,112円になる10月4日までに、少なくとも1,112円へ上げる必要があります。そこで、発効日の前日までに1,120円(60円の引き上げ)まで上げ、あわせて設備投資をすれば、50円コースの対象になります。
賃上げの条件
- 50円以上引き上げる引き上げ額によって50円・70円・90円の3つのコースがある
- 最低賃金が変わる日の前日までに引き上げる発効日の当日やそれ以降に上げても対象外。福井県の令和8年度なら10月3日まで
- 1回で引き上げる何回かに分けて上げることは認められない
- 引き上げ後の時給を就業規則などに書く「この事業場でいちばん低い時給は〇〇円」と定める
- 対象は、雇ってから6か月以上たった、週20時間以上の雇用保険加入者入ったばかりの人や、雇用保険に入っていない短時間のパートは、引き上げる人数に数えられない
「引き上げる人数」には、いちばん低い時給の人だけでなく、その人の時給に追い抜かれる人も、コースの金額以上に上げれば数えられます。人数が多いほど、助成の上限額が大きくなります。
助成額:上限額と助成率
助成される金額は、「設備投資などにかかった費用×助成率」と「上限額」のうち、安いほうです。
助成率
- いちばん低い時給が1,050円未満なら 4/5引き上げ前の時給で判断する
- いちばん低い時給が1,050円以上なら 3/4福井県では、令和8年度の改定前の最低賃金が1,053円だったため、多くの事業場がこちらになる
上限額(事業場の従業員が30人未満の場合)
| 引き上げる人数 | 50円コース | 70円コース | 90円コース |
|---|---|---|---|
| 1人 | 40万円 | 50万円 | 100万円 |
| 2〜3人 | 70万円 | 100万円 | 240万円 |
| 4〜5人 | 70万円 | 130万円 | 270万円 |
| 6〜7人 | 90万円 | 180万円 | 360万円 |
| 8人以上 | 110万円 | 230万円 | 450万円 |
| 10人以上(特例事業者のみ) | 130万円 | 300万円 | 600万円 |
厚生労働省「令和8年度 業務改善助成金のご案内」より。事業場の従業員が30人以上の場合は、1人・2〜3人の上限額が少し低くなります。
計算の例
従業員10人ほどの事業場で、いちばん低い時給1,060円の3人を1,120円(60円の引き上げ=50円コース)に上げ、100万円の設備を入れた場合で考えます。
- 費用×助成率:100万円×3/4=75万円引き上げ前の時給が1,050円以上なので、助成率は3/4
- 上限額:70万円50円コース・2〜3人の上限
- 助成額:70万円安いほうの70万円が支給される
福井県の上乗せ補助(後で説明します)を受けられれば、国の支給決定額の5分の1にあたる14万円が加わります。数字は仕組みを説明するための例です。実際の計算は、最新の交付要綱・要領で確認してください。
対象になる設備投資、ならないもの
対象になるのは、仕事の効率(生産性)を上げるための設備投資などです。厚生労働省の案内では、次のような例が挙げられています。
- 機器・設備の導入POSレジを入れて在庫管理の時間を短くする、リフト付きの特殊な車両を入れて送迎の時間を短くする
- 経営コンサルティング国家資格を持つ専門家による、お客様の回転率を上げるための仕事の流れの見直し
- その他顧客管理の情報をシステムにまとめる
一方で、次のものは注意が必要です。
- パソコン・スマホ・タブレットなどの端末原則は対象外。物価高騰などで利益率が下がった「特例事業者」に当たる場合だけ、新しく入れるものに限って対象になる
- 自動車令和8年度から、特殊な用途の車を除いて対象外になった。以前の年度の解説を見るときは注意
- 交付決定の前に買った・導入したもの対象外。見積もりは取っておき、発注は交付決定の後にする
事務作業を減らすためのシステムやソフトも、仕事の効率を上げるものであれば対象になる可能性があります。ただし、対象になるかどうかは労働局の審査で決まるので、申請前に労働局に相談して確かめるのが確実です。
特例事業者とは
次のどちらかに当てはまる会社は「特例事業者」になり、上の表の「10人以上」の上限額が使えるなど、条件が広がります。
- 賃金要件事業場のいちばん低い時給が1,050円未満
- 物価高騰等要件原材料費の高騰などの外的な要因で、申請前6か月の平均の利益率が、前年度より3パーセントポイント以上下がっている。この場合は、パソコンなどの端末も新規導入なら対象になる
申請から支給までの流れ
- 交付申請賃上げの計画と設備投資の計画を書いた申請書を、事業所のある都道府県の労働局に出す
- 交付決定労働局が審査して、通知が届く。設備の発注はここから
- 事業の実施計画どおりに賃上げをし、設備を入れて代金を支払う。令和8年度は、交付決定の年度の1月31日までに終える
- 事業実績報告・支給申請終わったら、実績報告書と支給申請書を労働局に出す
- 助成金の受け取り審査のうえで金額が決まり、振り込まれる
助成金は後払いです。設備の代金はいったん会社が全額を払うので、資金の手当ても先に考えておきます。日本政策金融公庫には、最低賃金の引き上げに取り組む会社向けの融資(働き方改革推進支援資金)もあります。
福井県の会社が知っておきたいこと
令和8年度の受付は、9月1日から10月2日まで
国の案内では、受付期間は「9月1日から、その県の最低賃金が変わる日の前日、または11月30日のどちらか早い日まで」です。福井県の令和8年度の最低賃金は、1,053円から59円上がって1,112円になり、10月4日に変わりました。福井労働局の案内では、受付期間は9月1日から10月2日まででした。
最低賃金の引き上げ額が決まるのは毎年8月ごろなので、それから計画を立て始めると、受付期間に間に合わせるのは大変です。福井地方最低賃金審議会も、令和8年8月の答申で、受付の開始を9月1日より前倒しして期間を長くするよう国に要望しています。来年度は時期が変わる可能性もあるので、夏ごろに発表される新しい案内を確認してください。
福井県の上乗せ補助と奨励金
福井県には、業務改善助成金を使う会社向けの制度があります。
- ふくい業務改善・賃上げ応援事業(A)補助金国の業務改善助成金の交付決定を受けた会社に、国の支給決定額の5分の1を県が上乗せする
- ふくい業務改善・賃上げ応援事業(B)奨励金業務改善助成金の申請者で、いちばん低い時給を90円以上引き上げる会社に、県が奨励金を出す
金額や条件は年度ごとに変わるので、福井県の労働政策課の案内で確認してください。
無料の相談先
- ふくい働き方改革推進支援センター(0120-14-4864)社会保険労務士などの専門家が、助成金の使い方や就業規則の見直しの相談に無料で応じる。平日9時〜17時
- 福井労働局 雇用環境・均等室(0776-22-0221)業務改善助成金の申請先。対象になる設備かどうかの確認も
- 業務改善助成金コールセンター(0120-366-440)制度全体についての問い合わせ。平日9時〜17時
来年度に使うために、今からできる準備
- いちばん低い時給と、対象になる人を確かめる雇ってから6か月以上・週20時間以上・雇用保険加入の人が何人いるか。何人をいくら上げられるかで、コースと上限額が決まる
- 効率を上げたい仕事を決めるどの作業に時間がかかっているかを書き出す。設備投資の「効果」を説明するときの材料にもなる
- 入れたい設備やシステムの見積もりを取る申請には見積もりが要る。発注は交付決定の後なので、見積もりだけ先に
- 就業規則の賃金の定めを確認する引き上げ後の時給を書き込む必要がある
- 夏の発表に備える8月の最低賃金の答申と、新しい年度の要綱・要領が出たら、すぐに計画を固める
- 資金の手当てを考える助成金は後払い。代金をいったん払える準備をしておく
2番目の「どの作業に時間がかかっているか」の書き出し方は、「業務効率化の進め方とアイデア15選」で紹介しています。何に投資すると効率が上がるかを先に整理しておくと、申請の計画も書きやすくなります。
助成金の申請書類の作成や提出の代行は、社会保険労務士の業務です。当相談室では、仕事の効率を上げる方法のご提案と、使える助成金・補助金のご案内、申請のアドバイスまでを行っています(申請書類の作成・提出の代行は行いません)。
よくある質問
業務改善助成金で車は買えますか?
令和8年度からは、特殊な用途の車(リフト付きの送迎車など)を除いて、自動車は対象外になりました。以前の年度は特例で対象になる場合があったため、古い解説には「車も買える」と書かれていることがあります。
パソコンやタブレットは対象になりますか?
原則は対象外です。物価高騰などで利益率が下がった特例事業者に当たる場合だけ、新しく入れるものに限って対象になります。
過去に使ったことがある会社も使えますか?
使えます。ただし、同じ事業所が申請できるのは1年度に1回までです。
受付期間内なら、必ずもらえますか?
いいえ。予算の範囲内で交付されるため、受付期間の途中で募集が終わることがあります。準備ができたら、早めに申請するのが安全です。
申請は自分でできますか?
できます。厚生労働省のサイトには、申請書の作成ツールやQ&A、活用事例集が載っています。分からないところは、ふくい働き方改革推進支援センターで無料で相談できます。書類の作成から代行してほしい場合は、社会保険労務士に依頼します。
まとめ
- いちばん低い時給を50円以上上げ、効率を上げる設備に投資すると、費用の一部が助成される助成率は3/4か4/5、上限は30万〜600万円
- 最低賃金に合わせて時給を上げる会社こそ対象発効日の前日までに、1回で、50円以上上げる
- 福井の令和8年度の受付は9月1日〜10月2日の約1か月来年度は時期が変わる可能性もあるので、夏の発表を確認する
- 交付決定の前に買った設備は対象外。自動車も原則対象外見積もりだけ先に取っておく
- 福井県の上乗せ補助(国の支給決定額の5分の1)もある無料の相談先も使える
参考:厚生労働省「令和8年度 業務改善助成金のご案内」、福井労働局「福井県最低賃金の引上げに係る各種支援策の周知に関する要請書」(令和8年8月17日)、福井労働局「福井地方最低賃金審議会の意見に関する公示」(令和8年8月10日)、福井地方最低賃金審議会「福井県最低賃金の改正決定について(答申)」